京つう

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2010年06月09日

神々の山嶺

夢枕漠の山岳小説で、柴田錬三郎賞を受賞しています。庫本上下巻合わせて1000ページにも及ぶ大作なのですが、引き込まれて一気に読んでしまい、その後も何度となく読み返しています。難しい登山用語などはなく、登山をやったことがない人、興味のない人でも面白く読めます。

伝説の孤高のクライマーが、前人未到のエベレスト南西壁冬期無酸素単独登頂に挑む話。実在し、山に命を散らした日本の登山史において伝説的な人物がモデルになっています。

山登りを全くしたことがない私には、山に登ったり、氷の壁を踏破することにどうしてそんなにとりつかれてしまうのかわかりませんでした。でもある人にとっては生きるか死ぬかの厳しい状況に身を置いて、まだ誰もやったことがない困難に立ち向かうことが、生きる意味なのだということは、この小説で深く理解できました。人知のおよばない大いなる力に、人生を懸けて挑み続ける人間の迫力が強く伝わってきます。

実際の山登りはしなくても、山岳小説は緊張感にあふれ、雪山に身を置いているかのような仮想体験をさせてくれるので好きです。そういう意味ではこの小説は、読み終わった後に、テレビの画像や写真でしか見たことがない、神々の領域チョモランマの最高峰がまぶたに浮かんでくるような気がしました。


◆神々の山嶺

著者:夢枕漠
出版社:集英社文庫
発売日: 2000/8/18
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Posted by ありす at 23:52